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漢方の現在地と未来について、第一線で活躍する先生にインタビューする連載「KAMPO message」の第3回目は富山大学 医学部 和漢診療学講座教授の貝沼先生に大学での研究と漢方の未来について、お話を伺いしました。



――最近の漢方を取り巻く環境の変化で感じていることをお聞かせください。

 

貝沼先生:1910年代後半から20年代前半にかけて流行したスペイン風邪のとき、漢方が使用された事実やその結果についての書物は残っているんですが、データとしては残っていませんでした。これは漢方界にとっては、とても残念なことです。 

しかしこの経験を経て今回のコロナ禍では、東洋医学会が主導でエビデンスが残せた*のは、画期的なことだったと思います。 

 

しかし一方で、出荷調整がかかるほど、漢方薬は品薄状態になりました。世の中的にも漢方薬のイメージアップにもなりましたし、これを機会に漢方を取り入れた先生が増えたのも事実です。  


 




――漢方業界にとってはいい傾向ですね。 

 

貝沼先生:それがいい面だけではないんです。たくさんの先生が漢方薬を使う状況になればなるほど、今後、大学として求められるのは、エビデンスです。 

しかし、出荷調整の時期から未だ需要が尽きることがないので、より多くの先生に使ってもらうために、エビデンスを出していきたいという思いとは裏腹に、二重盲検法(ダブルブラインド)をするための、プラセボ薬の製造に至れないという現状があります。  

 


――漢方を学ぶ環境についてはどうですか?漢方薬の置かれている現状の厳しさを改めて、痛感いたしました。そんな中、患者さんが多く求めていることは実感されますか? 

 

貝沼先生:90%近い医師が漢方薬を処方しいるというデータもあるほど、かなり多くの医師が漢方薬を処方している事実があります。 

そして患者さんたちも漢方を積極的に取り入れたいと言ってくれているのを目のあたりにしています。 

しかし東洋医学の専門医として、漢方医学的な診察をしっかり行い処方する医師はまだまだ少なく、たまたま遠隔診療で一緒に患者さんを診ることになったのですが、 遠隔診療をしながら、現地の先生にアドバイスすることが、とても漢方の教育にも有効だと感じています。 



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貝沼茂三郎先生 

2023年4月富山大学和漢診療学講座3代目教授に就任。 

日本東洋医学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本肝臓病学会専門医、日本病院総合診療学会認定医・指導医も務める。 

漢方医学と西洋医学の融合診療を目指しながら、現代科学的研究を行っている。 



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