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――遠隔診療というのは新しい取り組みですね。

 

貝沼先生:遠隔診療もデジタル化のひとつの例ですが、こういう取り組みによって、レベルの標準化がされることも多いので、大事なことだと思います。 

標準化されれば、漢方初心者の先生方が熟練した先生と同じように診断ができるようになるのも、とてもすばらしいことだと思います。

私たちも千葉大学が開発した装置を使って、患者さんの舌写真を撮影していますが、その写真をデータ化したものを、診察のときに参考にすることによって、診断の精度を上げることができるのではないかと考えています。


また遠隔診療では問診や舌診は対応できますし、腹診もある程度、事前にコンセンサスを取っていれば可能です。 



 

その場にいなくても、医療環境を整えることができると実感しています。 

指導医が一緒にいることで、現地の先生も安心して治療にあたれますし、そのときの診療で感じた疑問を解決することもできます。一緒に診察をしている先生は漢方の専攻医ではないのですが、自分でも腹診などの診察のやり方や漢方の考え方を積極的に勉強して、漢方にとても興味をもってくれているのを実感しています。

でも理想をいうのであれば、いつか脈診を遠い地にいながら、一緒に診ることができたらもっと精度があるんですけどね。 

デジタルの進化で、その実現ができるのを楽しみにしながら、現在は遠隔診療で得たものを研究にも役立てていきたいと思っています。 



――そのほか、新しい考えや取り組みはありますか?

 

貝沼先生:海外に薬を輸出することはできませんが、診断技術であれば輸出できるのではないかと思っています。 

世界には、それぞれの地域に伝統医学がありますよね。日本と同じように、症状に対応した植物や動物、鉱物があると思うんです。 

それを例えば他エリアで使っているものが、日本では瘀血や水滞に用いる薬に分類されるのではないかなど。


それぞれの考え方や診断技術を融合することで、世界レベルで伝統医療の垣根を超え、各地域の伝統医学の発展につながるのでないかと考えています。

そういった意味で日本の伝統医学を世界のwell-beingに役立てたいと考えています。

 

*新型コロナウイルス感染症の急性期症状に漢方薬 漢方薬投与による発熱緩和、重症化抑制を確認 

https://www.med.tohoku.ac.jp/5265/ 



貝沼茂三郎先生 

2023年4月富山大学和漢診療学講座3代目教授に就任。 

日本東洋医学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本肝臓病学会専門医、日本病院総合診療学会認定医・指導医も務める。 

漢方医学と西洋医学の融合診療を目指しながら、現代科学的研究を行っている。 



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